出産
「見てあげてください。元気に生まれましたよ。」産声を聞いてからほどなく、看護師さんが、自分の顏のすぐそばに、赤ちゃんを連れてきた。ホッとした。今振り返っても、この瞬間は喜びよりも、深い深い安堵の気持ちが大きかった。不妊治療のクリニックを最初に訪れたのは2015年の夏。それから3年。この間、ずっと何か重たい物を背負ったような気持ちでいた。通院や日々の注射のストレス、先行きの見えない不安、積みあがっていく治療費。その重たい気持ちは流産を経験するたびに、より重たくなっていたのかもしれない。お酒を飲んでも、旅行をしても、友達とおしゃべりしても、いつも頭の隅に治療のことがありました。みんながみんなそうじゃないと思う。きっとこれは自分の性格なんだと思います。妊娠してからでさえ、過去2回の流産を思い出し、赤ちゃん服を用意するのが怖かった。だから、目の前に赤ちゃんが現れて、ようやく肩の荷が下りたようなそんな気持ちになりました。「ここからは、ゆっくりお休みいただくために全身麻酔にしますね。」先生のこの声を聞いてからのひと眠りは、これまでで一番安心しきった心地良い眠りだったように思います。まさかその後、自分の身に思いもよらぬ事態が起きるとは思いもせずに…。
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